山梨で​「地域と​向き合う」リアルな​取り組み
インタビュー

山梨で​「地域と​向き合う」リアルな​取り組み

第二の故郷で、リアルな声を届ける

― 都留市・地域おこし協力隊 井草桂太さんの3年間 ―

 

東京のオフィスで過ごした新卒時代。

窓の外には、都会で懸命に生きる人たちの姿が広がっていました。

それから数年。

井草さんは今、山梨県の自然に囲まれながら、生活をしています。

【「第二の故郷」に、もう一度飛び込んだ】

都留市は、富士山の麓に広がる人口約3万人の小さなまち。

井草さんが都留市をしったのは、都留文科大学への進学が決まってからでした。

卒業後は東京のIT企業に新卒で入社。

慌ただしい都市生活を送るなかで、自身の生き方に疑問を持ち退社、その後、地元である静岡へ帰省。

なんとなく過ぎていく日々の中で、楽しかった大学時代を思い出し、ふと目に留まったのが都留市での地域おこし協力隊の募集でした。

仕事内容は「情報発信・魅力づくり」。

大学時代に培った都留への愛着と、IT企業で身につけたデジタルスキル。

その二つが、ぴたりと重なりました。

「知らない土地ではなく、自分が好きだと思える場所で働きたかったんです。都留なら、そこに暮らす人の顔が浮かぶので」

ただ、学生として暮らしていた頃と、地域おこし協力隊として関わる都留では、見える景色は大きく違っていました。

【「布団のまち」を発信する ―つるねる―】

赴任後、最初に担当したプロジェクトの一つが、都留市の産業である寝具の魅力を伝える「つるねる」の運営でした。

実は都留市は「布団のまち」としての歴史を持っています。

しかし井草さん自身、学生時代はそのことをまったく知らなかったといいます。

活動では、

・公式HPの記事執筆とディレクション

・大学生インターンと週2回続けたInstagram運用

・インターン生が出演するYouTube企画の台本作成・制作

など、複数のメディアを横断しながら、都留の文化や歴史を丁寧に発信してきました。

「協力隊になったからこそ気づけた価値がありました。学生時代に住んでいたのに、こんなに地域資源があることを知らなかったんです」

【SNSの試行錯誤と、地域との「つながり」】

ふるさと納税のSNS運用では、事業者との連携やプレゼントキャンペーンを実施。

同時に、移住定住メディア「つる暮らし」では記事のマネジメントを担当し、都留での暮らしの魅力を言葉で伝えてきました。

しかし、発信の仕事は最初から順調だったわけではありません。

「SNSって、出せばいいというものではないんだと実感しました。いいねがまったく伸びない投稿もあって、どんな言葉が届くのか、ひたすら試行錯誤でした」

それでも発信を続けるうちに、少しずつ手応えが生まれます。

「つる暮らし」の活動を通して地域の人と関わる機会が増え、気づけば休日に声をかけてもらえるほどの関係が築かれていました。

「現地で暮らす人間だからこそ伝えられることがある。それが協力隊として発信する意味だと思うようになりました」

【次の世代へ、バトンをつなぐ】

井草さんが力を入れてきたのは、情報発信だけではありません。

人材育成にも積極的に取り組んできました。

大学生や市内の主婦の方を対象にライティング講座を開講。

受講者の中からフリーランスとして独立した人も生まれ、今も関わりがあるそうです。

さらに、大学生と地域企業をつなぐSDGs関連プロジェクトにも携わりました。

その活動を通じて、都留文科大学生の地域定着の現状を知る機会にもなったといいます。

かつて自分が歩いたキャンパスが、今度は「地域とつながる場所」として見えてくる。

学生だった頃とは違う視点で、都留というまちを見つめ直す経験でした。

3年間の活動で意識してきたのは、マネジメント・人材育成・自身のスキル向上という3つの軸。

これらを常に意識しながら活動を行ってきました。

【正直な反省と、それでも前へ】

活動を振り返るとき、井草さんは飾らない言葉でこう語ります。

「もともと引っ込み思案な性格で、地域に深く入り込むことが得意ではありませんでした。こんなに地域に関わらない協力隊はいないだろう、という自覚もあります」

体調を崩した時期もあったといいます。

それでも、「自分なりのやり方でいろいろなことを進めることができた」と前を向きます。

苦手なことと向き合いながら、新しい挑戦を続けた3年間でした。

「協力隊だからこそ、できたことがある」

【そして、次のステージへ】

任期を終えた井草さんは今後、まちのtoolboxの一員として、山梨県地域おこし協力隊ネットワークの事務局に関わっていく予定です。

協力隊を「外から支える側」へ。

かつて自分が飛び込んだ制度を、今度は次の誰かのために支える立場になります。

「都留文科大学生として住んでいながら知らなかったこと。この3年間で気づけた都留市の魅力と可能性を、これからも大切にしていきたいです」

学生時代に好きだったまちで、もう一度ゼロから関係を築き直した3年間。

発信し、育て、つないできた経験は、次のステージでも確かな土台になるはずです。

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山梨県の地域おこし協力隊は現在も各地で活動中。

都留市をはじめ、さまざまな地域で新しい仲間を募集しています。